今日は前職の同期の結婚式二次会だった。そこで5年くらい前から起業して会社を経営している同期にも会った。
そいつは今では、8人の社員を抱え、介護関連の人材紹介や就職支援を行う会社を経営している。業界でも一定のポジションを築き、順調に成長を続けているようだ。
ビールを酌み交わしながら「最近どうよ?」って感じで話した内容が、「権限委譲」について非常に参考になるものだったので、ここで紹介する。
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曰く、「起業当初、会社は自分の帝国だった。」とのこと。
そりゃそうだ。自分で事業プラン考えて、自分で立ち上げて、自分で顧客見つけてなんとか軌道に乗せた会社。数人の社員を雇ったとしても、それは人手が足りなかったからだけで、文字通り自分の手足として動いてもらうためだけの存在だったに違いない。実際、数年前に会ったときには、そう言っていた。「人増やせば、その分だけ売上げも上がるんだよな!笑いが止まらんわ!」って(笑)。
自分がやって成功したパターンを、そのまま100%部下に伝授して、そのままやってもらったんだと。そして一挙手一投足を監視した。部下の行動全てをチェックした。
結果として、何が起こったか。
「社員が定着せず、皆すぐに辞めていった」らしい。
彼が部下を監視したのは、不安だったからに違いない。サボりはしないか。売上げを着服したりしないか。そんなことされれば、まだ立ち上がったばかりの零細企業、あっという間に潰れてしまう。それだけは避けたい。なんとしても。・・・そういう心境だったのだろう。
でも、結果として採用した社員がすぐに辞めてしまっては、採用・教育の手間がかかるだけだ。組織としての体をなさない。自分一人が稼げる分しか稼げない。個人事業主と一緒。
そこで、彼は勇気を振り絞って行動を変えた。
思い切って、部下に仕事の進め方を任せることにしたのだ。
自分が関与するのは、売上げチェックや値引きの承認を下すなど、本当に僅かなことだけ絞った。これ、言うのは簡単だけど、実際はすごく難しいに違いない。
曰く、
「ものすっごく、怖かった。」
「だって、自分が全てを把握できなくなるんだから。」
でも、そうした結果、なんと、・・・売上げが倍増したらしい。そして社員が辞めなくなった。辞めないどころか、イキイキとした表情でモチベーション高く仕事をするようになったと。(今まではうつむいて暗い顔で仕事をしてたのに!)
まさに良い事尽くし。良かった良かった。
でも彼は言う。
「でも、やっぱり今でも怖い。」
「自分が外出から帰ったら、社員が売上金持って全員辞めてたりしたら・・・」
と。
それを聞いて自分も黙ってしまった。
「もっと部下を信頼して任せろよ。信頼しなきゃ信頼されないぜ?」などという正論は・・・きれいごとは・・・とても言えなかった。
きっと、経営者は常にそういう葛藤や悩みを持ちながら、「経営」をしているんだろう。
彼はMBAを学んだ訳でもないし、おそらくビジネス書もそんなに読んでないだろう。ただ、天性の「商売のカン」を持っている。金儲けの天才ではあると思う。
そんな彼が、起業から一定規模の売上げを上げられるように会社を育てた5年くらいの間で、上記のような「部下を管理する手法」を自ら見つけ出して、実践している。・・・これってすごいことだ。
ビジネス書を読み、エンパワーメントや権限委譲という言葉を覚え、意味を理解する、というプロセスとはまったく違う、「純然たる現実のケース」を目の当たりにして、とても考えさせられた。
自分はビジネス書を読むとき、MBAの授業に臨むとき、このレベルの現実感を持って臨んでいるだろうか。
今後も度々自問する日々が続きそうだ。
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