昔からの岡本太郎ファン、というわけでは無いけれども、半年ほど
その岡本太郎の生誕100年記念展、しかも会場は東京国立近代美術館。新卒で入社した当時の勤務地だった、竹橋のパレスサイドビルから徒歩5分のあそこか!なにやら運命を感じる、感じるぞ~、行かないと後悔しちゃうぞ~、と勝手に前のめりに解釈し、行ってきました。一人でこっそりと(笑)
内容は---言葉では表現できないほど素晴らしかったので、ぜひ皆さんもチケット買って自分の目で見てきてください!(ちなみに会期は明日日曜までです) 以上、エントリー終わり!
・・・ではつまらないので気づいた点を以下に。
順路に沿って岡本太郎の作品に触れている中で、ふと「キュレーション」という言葉を思い出した。ここ1年くらい、web界隈で流行ってる言葉だ。火付け役は、ITジャーナリストの佐々木俊尚氏。
佐々木俊尚公式サイト - キュレーション・ジャーナリズムとは何か
キュレーションという言葉に、的確な日本語訳はない。私はこう定義している。「キュレーションは情報を収集し、選別し、意味づけを与えて、それをみんなと共有すること」。(中略)インターネットのキュレーターは膨大な数の情報の海から、あらかじめ設定したテーマに従って情報を収集し、それらの情報を選別する。そし て選別した「これを読め!」という情報に対してコメントを加えるなどして何らかの意味づけを行い、それをブログやTwitter、SNSなどのサービスを 使って多くの人に共有してもらう。
佐々木氏が2月に出版した新書「キュレーションの時代」も話題になったのは記憶に新しい。ただ、この言葉はアメリカで最近出てきたジャーゴン(流行語)らしく、元々は、博物館などで展覧会を企画する人=「キュレーター」から来ている。
展覧会におけるキュレーターの仕事は、テーマを考え、参加アーティストやアート作品を選択し、しかるべき展示会場に好ましい効果を発揮するようにアート作品を設置し、カタログに文章を執筆することなどである。
私、普段は美術館も博物館もまったく行かない人間なので、キュレーターなんて言葉も存在自体もまったく知らなかったし興味も無かったが、今回初めて、そういう視点で見てみると、「キュレーターの凄さ」に度肝を抜かれることになった。
もちろん、岡本太郎が生み出した作品、そして岡本太郎自身(=コンテンツ)が素晴らしいというのも重要な要素だが、それをどう組み合わせて、展覧会全体をまとめ上げるかは、キュレーターの腕次第。
今回のキュレーターの仕事は、以下のとおり。
- 全体を貫くテーマを「対決」とした
- 7つの章に分け、それぞれ「○○との対決」というテーマを持たせた
- 各章の最初には、文章でその意味合いを解説
- いわゆる芸術作品(彫刻や絵画)だけでなく、当時のTV映像や模型、 そして数多くの著書の中に登場する印象的な言葉(これがまた心に響く!)などを組み合わせて展示
- 主立った作品には、作品タイトルの下に解説を付けた
- 最後にはくじびき?のような小さなサプライズプレゼントも!
これらをバラバラにではなく、どういう順番で何をどのように見せるのか、という流れにこだわり、全体として統一感・整合性を持たせて、しっかりと一つのメッセージに帰結させるよう、まとめ上げていた。
どの美術館、どの展覧会でも、裏でこういう人達が企画やマネジメントをしていたのかと思うと、今まで「作品の作者」にしか意識が行っていなかった自分の視野の狭さにちと自己嫌悪。
キュレーター、本当に凄いです。
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そして、これって、企業のwebサイトやfacebookページを作る際にも、すっごい参考になるのではないだろうか。
もちろん、まったく同じ、ではない。展覧会の場合は動線も基本一種類しかないし、途中離脱もない。気まぐれで立ち寄るというよりは、その展覧会が目当てで、入場料を払って前のめりで見てくれる。企画側からするとなんともありがたい状況だ。顧客視点というよりは、企画側の視点が強いだろう。マーケティング目的のwebサイトとは相当違う。
ただ、すでにあるコンテンツ(写真、動画、テキスト、インタビュー記事、広告クリエイティブ、社員ブログ等)を有効に活用し、でもコンテンツありきではなく、全体としてテーマを決めて、そこに向かってまとめ上げる、という意味では・・・まさにキュレーターそのものだ。
今までは色んな種類のコンテンツを一つにまとめるというのは技術的に難しかったが、今はそれができる時代になった。
そんな中、マーケティング担当者には「自社の社内に散らばるコンテンツを収集し、いかにキュレーションしていくか」という能力が待ったなしで求められる時代になってきている。
・・・太陽の塔のミニチュア模型を眺めながら、「すごい時代になってきたなぁ」と妙にワクワクしてしまった、休日の昼下がりなのであった。
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